ケインズの受難 2009 9 27
書名 世界同時バランスシート不況
著者 リチャード・クー 村山昇作 徳間書店
この本は、バブル経済崩壊後の日本について書いてあります。
(以下、引用)
資産価格が87%下がっても
GDPを落とさなかった日本の経済政策は正しかった。
(中略)
日本のすごいのは、バブルが崩壊してからである。
1990年を境に商業用不動産価格は大暴落する。
一挙に価格が87%も下がってしまった。
ところが、日本のGDPは落ちていないのである。
落ちないどころか、過去18年間、
一度もバブル期のピークを下回ったことがない。
(中略)
日本は、そこまで資産価格が下がったにもかかわらず、
GDPは落ちなかったし、失業率は6%に達することなく反転した。
「これでも日本の経済政策は間違っていたと思うのか」と言うと、
彼らは(欧米人は)、初めて「あっ」となるのである。
(以上、引用)
バブル経済崩壊後の日本の経済政策については、
誤解されている点が多いと思います。
現在、バブルが崩壊したアメリカにとって、参考になると思います。
さて、もうひとつ引用します。
(以下、引用)
これまでの経済学には、
残念ながらバランスシート不況という考え方は、全く存在しなかった。
ケインズも処方箋としては正しいことを言ったが、
なぜ財政出動なのかという説明は全くの的はずれだった。
財政出動というのは、
バランスシート不況の時だけ効果を持つものであって、
それ以外の時は、むしろ逆効果になってしまうのである。
ケインズは、そのことに気付かなかったために、
ケインズが神様扱いになった戦後20年は、
多くの国々でバランスシート不況でない時も、
財政が乱用されてしまった。
しかし、バランスシート不況以外での財政出動は、
高金利やインフレ、そして資源配分の歪み等の逆効果をもたらし、
その結果、財政出動自体が全面否定されるようなことになってしまったのである。
1970年代に「ケインズは死んだ」などと言われたのは、
まさにそこからきている。
(以上、引用)
つまり、この数十年は、「ケインズの受難」だったかもしれません。
しかし、師匠の学説を弟子が完成させるということも、歴史上あったと思います。
今、やっとケインズ理論は完成したと言えるでしょう。
「ケインズは死んだ」ではなく、「ケインズは始まった」でしょう。
参考までに、バランスシート不況とは、著者によれば、
「借金でファイナンスされたバブルが崩壊し、
借金に見合う資産がなくなった民間が、
一斉に利益の最大化から債務の最小化にシフトすることで起こる不況である。
(中略)
この不況では、バブルに乗って借金までして投資に走った人々が、
バブルの崩壊によって資産価格が暴落すると、
負債だけが残り、債務超過という状況になる。
資産より負債がはるかに大きくなるからだ。
そのような状況に置かれた企業や個人は、どのような行動を取るかというと、
当然のことながら、毀損したバランスシートを修復するため、
必死に債務を減らすようになる」と定義している。